動脈硬化症は心血管系疾患の危険因子であり，血管内腔の狭小化(狭窄)，血管壁の硬化を局所的に引き起こす．動脈硬化症の診断手法の一つである超音波やX線を用いた画像診断は，診断機会の少なさから症状が手遅れとなる場合があり，硬さの力学的評価が難しいという問題点がある．そこで，非侵襲的かつ簡便に取得可能な脈波を活用した早期診断が注目されている．脈波は狭窄や硬化などの力学的不連続点において反射・透過脈波に分離され，脈波波形を評価することで不連続点の形状，硬さが把握できると期待されている．評価指標の一つに，入射波と反射波の振幅比を表す反射係数がある．1次元円管の反射係数は，血管内半径，壁厚さ，壁硬さの物性値から計算でき，振幅比から血管物性が推定できる．しかしながら，実際の脈波は3次元的に反射するため，1次元理論に基づく反射係数が必ずしも適用できるとは限らず，血管物性の把握が困難である可能性がある．本研究では，1次元理論に基づく反射係数の3次元血管への有効性に関する基礎研究として，単純な3次元モデルを用いた流体構造連成を行い，単一脈波の反射脈波波形を抽出し，波形の振幅に関する力学的な考察を行った．

　【卒業論文】

　“HyperWorksを用いた流体構造連成による脈波伝播現象の数値解析”，京都工芸繊維大学，2024年2月．

　【国際会議発表】

1. Daiki Konosu and Tomohiro Fukui, "Effects of local changes in geometric characteristics and mechanical properties of blood vessel wall on reflected pulse waveform using fluid-structure interaction analysis", 22nd International Conference on Flow Dynamics (ICFD 2025), Sendai, Japan, 10 - 13 November, 2025, Conference proceedings, pp. 772-774.

　【国内会議発表】

1. 鴻巣太陽，福井智宏，“HyperWorksを用いた流体構造連成解析による動脈硬化血管の脈波反射に関する基礎研究”，第64回日本生体医工学会大会，福井，2025年6月．
2. 鴻巣太陽，福井智宏，“HyperWorksを用いた流体構造連成解析による動脈硬化血管の脈波伝播速度に関する基礎研究”，日本機械学会 関西支部 第100期定時総会講演会，大阪，2025年3月．
3. 鴻巣太陽，福井智宏，“HyperWorksを用いた流体構造連成による3次元円管内流れの脈波伝播速度に関する基礎研究”，日本機械学会 第102期流体工学部門講演会，長岡，2024年11月．
4. 鴻巣太陽，福井智宏，“HyperWorksを用いた流体構造連成による脈波伝播速度の数値シミュレーション”，日本機械学会 関西学生会 2023年度学生員卒業研究発表講演会，大阪，2024年3月．