血液系において，各々の血管は，その壁面に生じるせん断応力によって，血流量を局所的に調整している．この壁面せん断応力に関して，血液を懸濁液と捉える微視的な研究は重要である．本研究では，懸濁液の流動特性に着目し，上下壁面のせん断応力に差のある管内流れにおける数値解析を行うことを目的とした．このような上下非対称な流れ場を再現するため，計算モデルには二次元曲線流路を用いた．また，計算手法として正規化格子ボルツマン法と仮想流束法を用いて検討を行った．その結果，流路の曲率半径とレイノルズ数により，粒子の平衡位置が上下非対称な2点もしくは，内壁側に1点のみとなることが確認された．この平衡位置の数は，半径方向に生じる圧力勾配によって変化することが示唆された．また，曲率半径が短くなるほど，平衡位置は内壁に近づくことが確認された．それにより，粒子－壁面間距離は短くなり，巨視的な相対粘度は高くなることが示唆された．

　【卒業論文】

　“曲がり管による物体力を考慮した懸濁液に関する基礎研究”，京都工芸繊維大学，2022年2月．

　【修士論文】

　“二次元曲線流路による非対称な流れ場における懸濁液の粒子挙動と相対粘度に関する数値解析”，京都工芸繊維大学，2024年2月．

　【学術論文】

1. Taiki Iida and Tomohiro Fukui, "Numerical simulation of microscopic particle behavior and macroscopic relative viscosity of suspension with asymmetric flow field in a two-dimensional curvilinear channel", Journal of Fluid Science and Technology, vol. 19, no. 2, 0010, pp. 1-17, 2024.

　【国際会議発表】

1. Taiki Iida and Tomohiro Fukui, "Numerical Simulation of Microscopic Particle Behavior and Macroscopic Relative Viscosity of Suspension with Eccentric Flow Field in a Two-dimensional Curvilinear Channel", ASME-JSME-KSME Joint Fluids Engineering Conference 2023, Osaka, Japan, 9 - 13 July, 2023.